MUSIC 浜渦 正志 Masashi Hamauzu
私がスクウェア・エニックスで関わった初めての「FF」が『FFVII』でした。コーラスの手配と歌唱、また劇中に短く流れていたハイドンの「天地創造」の打込と歌のディレクションで関わらせていただきました。その後、『FFX』、『FFXIII』やその関連作品の作曲、編曲を担当させていただき、気づくともう20年以上の月日が経っていました。
今回また、北瀬さん、鳥山さん、植松さんら、多くの当時と同じスタッフの方々とご一緒させていただくことになったのですが、何というか、時間が逆流するような感覚になりました。表向きは開発の関係ですが、彼らは私にとっては給与明細をくれる先輩、何を考えているか分からない先輩であり、月日が経って、退職を報告したり、手紙を送ったり、人となりだけでインスピレーションを引き出してもらった人達であったのでした。仕事以外で会話することなどは全くなかったわけですが、長い開発の中ではそういったものも記憶に強く残っていくのです。
北瀬さん、鳥山さんからお声がけいただき、また植松さんにもご推薦いただき…そりゃあもう絶対に応えるしかないなと。新しいシステムに大きな制限も感じたり、歳をとったからかゲームもうやだ!というくらい疲弊もしましたが、最後はそういった気持ちによって押し返すことが出来たと思います。「今回も」ですが「ファイナル」のつもりの曲はなんとか書けたかなと思います。
MUSIC 鈴木 光人 Mitsuto Suzuki
「音楽先行でこのシーンを作りたいのですが」
『FFVII リメイク』開発チームからの参加要請はこんな嬉しい打診からでした。
振り返れば『FFVII』オリジナル版がリリースされた時、僕は音楽業界に身を置いており、愛読してる音楽雑誌に毎月のようにスクウェアサウンドの求人が『FFVII』の広告と一緒に掲載されていました。月日は流れゲーム業界に携わるようになって10数年。『FFVII リメイク』の開発に参加するのは、なんだか不思議な感覚と同時に、当時体験した「音」や「驚き」そして「情景」までが鮮明に思い出される感じでした。
オリジナルスタッフに混じり自分自身の立ち位置を把握するのにはそれほど時間はかかりませんでした。リメイクならではの新要素、新しい息吹を加えるのが僕の役割でした。新曲だけでなく、オリジナル版をリスペクトした上でのアレンジやサンプリング、完全リメイク対応曲など音楽の遊び心も随所に盛り込み、オリジナル版のユーザーにも、そしてリメイクからプレイされる方々には喜んでいただけるよう曲数も演出も盛り盛りです。ウォール・マーケット、蜜蜂の館、ミッドガル・ハイウェイなどの開発はまさに興奮の連続。オリジナル版の時に受け手として感じた「驚き」や「楽しみ」を再び、そして1つ大きく違うのは、今は送り手としてここにいる事です。沢山のサウンドスタッフと一緒にこの世界の音をリメイクしました。
あと少しです、どうぞお楽しみに!
(2020年1月31日)
MUSIC [Comment] 植松 伸夫 Nobuo Uematsu
自分にとって「FF」シリーズはどれを取っても思い出深い作品ばかりですが、こと音楽に限っていえば「実験的な挑戦」を始めることができたという意味で『FFVII』がもっとも印象的な作品といえるかもしれません。
シンフォニックな「オープニング~爆破ミッション」にしろ、一曲の中に様々な風景を描いた「メインテーマ」にしろ、数小節ごとのフレーズを順列組み合わせで作った「片翼の天使」にしろ、それまでの「FF」シリーズにはなかった曲調です。前作の『FFVI』とはプラットフォームも変わりゲーム機の表現力も増したそのときこそが新しい挑戦にはうってつけのタイミングだったのでしょう。しかし今となればそれはハードが進化したせいだけではなく、時代そのものがゲーム音楽に変革を求めていたとも思えるのです。元々は子供のおもちゃとして生まれたはずのビデオゲームは、ちょうどあの頃大人でも楽しめるエンターテインメントに変身を遂げようとしていたのです。
しかし変わるといってもどこに向かって何をどうすればいいかさっぱりわからない。正解など誰も知ろうはずもありません。とりあえず完成形の目標をたてることなく、誰の意見にも耳を貸すこともなく、ただただ一人で部屋にこもって毎日毎日黙々と挑戦を続けさせてもらえた結果が『FFVII』の音楽です。
今回はゲーム中で流れる「Hollow」という歌を作らせてもらいました。この曲もこれまでの「FF」にはなかった曲調です。自分にとってはこれも「実験的な挑戦」の延長線上にあるのです。
https://www.jp.square-enix.com/ffvii_remake/about/index.html#staff